『王恋』☆ハロウィンは恋ざかり☆
「待つんだ」


図書室の重い扉の取っ手に手をかけたマリー・ルイーゼはビクッとなった。


可哀想に……。


エルンストは彼女が気の毒でたまらなかった。


「片方の靴を履いていないだろう?」


振り向いた彼女は言われてもポカンとしていた。


エルンストが黒いヒールを見せると、「あっ」と声を漏らした。


彼女がこちらに来る前に、エルンストが近づき彼女の目の前で跪いた。


「エ、エルンスト様!自分で出来ますから!」


アルフォンス王子の側近であるエルンストに跪かれて、マリー・ルイーゼはうろたえた。


「足を出して」


命令されてマリー・ルイーゼはそっとハイヒールを履いていない足を前へ出した。



< 39 / 71 >

この作品をシェア

pagetop