わたしとあなたのありのまま ‥2‥


 隣の田所を見上げれば、素知らぬ顔。
 正面向いたまま、「行くぞ」と私の手を引いて歩き出す。

 そして、彼女たちにまるで見せ付けるかのように、私の指に田所のそれを絡めた。
 恋人繋ぎなんか、一度もしてくれたことないのに。

 そんな、さりげなく優しいところも大好きだ。
 そして私は、こんな時すかさずフォローしてくれる田所に、いつも救われている。


「田所、手ぇ洗った?」

 私も気にしない、気にしたら駄目だ。
 いつも通りにしていなきゃ。

「洗ってない」

 田所は悪戯っぽく笑ってようやく私に視線を寄越す。
 嘘つき。
 ちゃんと洗ったくせに。
 だって、田所の手はひんやりと湿っている。


< 15 / 363 >

この作品をシェア

pagetop