わたしとあなたのありのまま ‥2‥



「部屋、二つとったから」

 旅館従業員の後について歩きながら、照哉くんは私たちを振り返って言った。
 その顔に得意気な笑みを浮かべて。


 湖沿いの旅館を予約してくれたのは、照哉くんだ。
 格安で、かつ出来る限り小奇麗なところ、と注文を付けたのは綾子。

 照哉くんは、相当探しまくって、やっとのことでこの旅館を見つけたらしい。
 愛のパワーは偉大だ。


 私たちが泊まる部屋まで案内すると、マニュアル通りの挨拶と、簡単な説明を済ませ、従業員はさっさとその場を後にした。


 照哉くんが、手にしていた二つの鍵のうちの一つを田所に差し出したので、そうはいくかと、横から奪い取った。

 すかさず綾子の手を引き、

「それじゃ、後でね」

 と早口で言い、隣の部屋へと向かった。


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