わたしとあなたのありのまま ‥2‥
「どうして?」
田所も怖いとか……
まるで理由がわからない。
「また途中で『早く抜け』って怒鳴られるかもだし?」
田所は意地悪く微笑む。
「あ、田所、根に持ってんだ。
男のくせに、ねちっこい」
言い返せば、「冗談だわ、バカ」と可笑しそうに笑う。
「じゃあ、どうして?
どうして田所も怖いの?」
「――だから」
ボソボソと田所が何か言ったが語尾しか聞き取れなかった。
「へ? 何?
何て言ったの?」
とても大事な言葉を聞き逃してしまった気がして、ムキになって聞き返した。
そうしたら、今度は不必要なほど大きな声で、やけな調子で言った。
「好きだからっつったんだよ。
んなこと何度も言わすな」
「本当に聞こえなかったんだよ。
そんなに怒んなくてもいいじゃん。
でも……
田所、そんな素振り全然見せてくれないから、
だから、ちゃんと言葉で聞けて良かった。
ありがとう」