トランキライザー

 ビールを敦志はごくごくと飲んだ。

「つぐみちゃんてさ、圭斗のことどうでもいいと思ってんのかと思ってたけど、そうじゃないんだな」

「は?」

「いや、だってそうだろ?家の前でわざわざ待つか?」

「俺が連絡無視したからだろう?」

「でも、つぐみちゃん鍵持ってるんだろ?」

 そう言われて、ハッとした。

「鍵あるなら、勝手に入って荷物も持って帰るだろうし、帰る家がないなら、他の適当な男の家にでも行ってるだろうよ。でも、わざわざ何時に帰るか、もしくは帰ってこないかも知れないおまえの家の前に居たってことは多少なりにおまえに対して愛があったんだろうなって俺は思ったけど」
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