トランキライザー

 敦志は彼女の今までの浮気を知っている。

「ははっ。またかよ」

 笑うのかよ。慰めろよ。

「まただよ」

「もう何回目だよ」

 ビールを飲みながら一息つく。

「さぁねぇ、もう覚えてないくらいだよ」

 嘘。本当は覚えている。でも思い出したくない。思い出すだけで苛立ちがこみ上げる。

「いっそのこと別れちゃえばいいじゃん。マジで病気だって」

「別れるかぁ・・・、そうだな」
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