トランキライザー

『シーツ捨てておいて。明日新しいの買ってくる』

 俺は自分でそう言った。でも仕事があったし、頭に血が上っていたのもあって忘れていた。

 つぐみはそれを見越していたんだろうか。きっと買い物はこれだったんだ。

 元はつぐみのせいとはいえ、買い物のことを怒ったことを少し反省した。

 言ってくれればあんなふうに言わなかったのに・・・。

「言い訳を言えなくしているのは俺なのにな」

 寝ているつぐみの横に座り、つぐみの顔にかかった髪をかきあげ、顔を覗き込んだ。

「何があっても離れないでくれよな」

 忠犬のように、ずっと俺の帰りを待っていてくれ。
< 92 / 186 >

この作品をシェア

pagetop