甘く、甘い、二人の時間


「なぁ、拓海。隣のビルに可愛い子が入って行ったよ。」



隣のデスクの同僚が、間抜けな顔して呟く。


はぁぁぁぁぁ。

今俺達の部署は、大事なプロジェクトを抱えてピリピリしてるっていうのに。


こいつは……。


「お前さ、窓の外ばっかり見てないで手を動かせよ。この資料明日までには仕上げないと――」

「言うな!」

「は?」

「俺は今、現実逃避している。」

「…はぁ?」


「昨日までで4日も連続で残業だぞ?毎日終電で帰宅だぞ?しかも、このピリピリした空気……。少し位現実逃避しても、バチは当たらないはずだ。」



「……」


反論する気にもならない。

どうやら同僚は頭がいかれたらしい。





まぁ確かに働き過ぎの様な気がするが、プロジェクトが無事に成功すれば、この努力が報われるわけだし。

俺の場合は、やりがいを身体中で感じて闘志が湧いてくる。





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