甘く、甘い、二人の時間
菫を腕に抱きながら、ポツリと呟く。


「あの日さ、菫に出逢えて良かった。」



本当に心からそう思う。



たまたま10時に仕事が終わったのも、雨がパラパラ降っていたのも、偶然のはずだけど。



必然だった。




すると、俺の言葉を聞いて菫はクスリと笑った。



「菫?どうした?」



何で笑っているのか分からなくて菫を見つめると、ニッコリ笑顔。





「あれ、偶然じゃないの。」


「…は?」


何の事か分からない俺は間抜けな返事をかえす。



「今だから言うけど、あの時…拓海は携帯しか見ていなかったから、私わざとぶつかったの。」


「は?何で?」


「何でって……。拓海の事、初めから知ってたの。隣のビルで働いている人だって。
すごく気になってて、どうしても近づきたくて――。」



わざとぶつかってきっかけを作ったの。



菫は、その可愛い顔に天使の様な笑みを浮かべて、囁いた。







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