《完》シークレット・ティアラ 〜不器用なシンデレラ〜
あたしは代金を受け取り
ながら、なぜかそのことを
一番に考えてた。



(いい人だな……)



だってあの状況じゃ、
あたしを一方的に責めたって
おかしくないのに。



自分のせいだって言って
くれて、崩れたお弁当も
許してくれて――…。



「あ、あの――本当に、
ありがとうございました!」



部屋を出る間際、あたしは
もう一度、彼――ヒロム
さんに向かって、大きく
頭を下げた。



ヒロムさんは別に何でも
ないって涼しい顔であたしを
見下ろして、



「礼を言われるほどの
ことじゃない」


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