鬱(うつ)は必ず治るのだから
一時、妻は「生きているのがつまらない」とあまりにも自殺を口にするので、どこまでが真意なのか分からず「勝手にしろ」とキレたことがあった。

あとから知ったことだが、自殺者の6割だか7割の人がうつ病らしい。

頑張れと声をかけるのは禁句。

あれこれ頼み事をするのもよくない。
それが彼女の負担となる。

「考えがまとまらないの」

夕食でさえ何を作ったらいいか分からず、一人苛立っていることもある。

物事を同時にいくつも考えられないから、すぐに思考がパンクしてしまうのだろう。
身近に接しているものとしてはそれが悲痛な叫びに聞こえる。

何とかしなければ。

そうは思っていても、子供との日々の生活を守ることで精一杯で、妻へはどう接していいのかさえ分からずにいた。




昨日までの冷たい雨がようやく上がり、気温はぐんぐん上昇、1月だというのに温かい南風が吹き荒れる日だった。

「暖かいのは今日まで。明日からは気温が一気に下がり、冬の装いを始めるでしょう」

訪れる日が、いい日か悪い日かなんて誰にも分からない。

それでも明日は平等にやってくるんだ。
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