もらう愛=捧げる愛
503


「失礼します…」


4人部屋の左窓際のベッドの課長が、あたしに向かって苦笑いを作る。


「課長…」


「初音」


「大丈夫…じゃ、ないですよ、ね…」


「参ったよ。これじゃ、初音を救おうにも身動きがとれないな」


「あたしの事より!あの…車に細工、って…」


「あぁ。ブレーキオイルが抜かれてたってさ」


それって…。


課長は何も言わずに頷く。


やっぱり…多田さん…?


「初音、オレが仕事復帰したら、この病院を辞めるんだ」


「え…?」


「引っ越しも1日で済ませろ」


「…多田さんから………」


「逃げるんだ」


「でも…」


ここを離れたら、あたしの居場所がなくなっていまう。


ハルくんの。


右側を失ってしまう。


「ブレーキオイルの犯人を警察に言うつもりはない。初音にまた傷を残す事になるからな。ただ、これだけは約束してくれ。多田から逃げろ」


強い課長の目に頷く事ができず、あたしは病室を後にした。
< 107 / 137 >

この作品をシェア

pagetop