愛する人。




『はっ?

 喧嘩でもしたか?』


「違う。―――全部話した。

 俺が九条病院の息子だって事も、昔から彼女を知っていた事も…」




 俺の言葉に海斗は息を飲んだ。


 かける言葉が見つからないのか、しばらく沈黙が続く。





『それで…』

「昨日が最後だったんだ。

 お前の言う通りだったよ。
 何も知らせないままなんて、始めから無理だったんだ。

 俺といれば嫌でもあの人を思い出す。彼女の心から消し去る事なんて出来やしない。

 俺は、ずっといないあの人に嫉妬し続けるんだ――…」



『蓮……お前…』




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