愛する人。




 女将さんには並々ならぬ恩がある。



 女の一人旅なんて一番敬遠されるのに、女将さんは気にせず、気さくに毎日他愛もない話をしてくれて。


 そんな日が、一週間を過ぎた頃。



『女には色々ありますよね。

 ここの温泉はあらゆる傷に効果的です。目に見える傷、見えない傷……。

 ……早くあなたの本当の笑顔が見たいわ。

 失礼だけど、もし行くところがないなら、うちで働かない?
 住み込みで光熱費はタダ、忙しいからオチオチ考える暇なんてないわよ?』



 最初は柔らかい印象だったのに、慣れてきたら商売人の顔が出てきた。


 有り難い話だけど……


『……妊娠してるんです。子供がお腹にいて…』





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