亡國の孤城 『心の色』(外伝)
ブーッ…と、細かな水飛沫が美しいステンドグラスからの陽光の中で、ダイヤモンドダストの様にキラキラと輝いた。
虹色に瞬くそれは優雅に舞い、景色という景色を美しく彩っていたが。
如何せん。一つ残念な点を上げるとすれば、それが濃くのある鳥殻スープということだろうか。
食堂代わりに使っている広い部屋のど真ん中で、その噴水は突如噴きあがった。その場にいた誰もが会話を中断し、口に運んでいた匙の動きを一瞬止めて注目した。妙な沈黙と視線が、一斉にこちらに集中するのを感じながら、ダリルは反射的に構えたお盆を下ろした。
スープの噴水を噴きだした張本人は若干むせ返りながら、興奮気味にこちらに向き直ってきた。口の端から、驚きのあまり噴いてしまったスープがだらだらと流れている。とても汚い。
「……し…しつむぅ…!?あんたが!?嘘ぉーー!?」
「そんなに驚くことでもないと思うけど。…イブ、汚い。唾を飛ばさないで」
その辺にあった台拭きでスープ塗れになったテーブルを拭き、そのまま無造作にイブの口元を拭い、平然とダリルはスープを飲み直しにかかった。
手を止めていた他の兵士達も、ゆっくりと食事を再開する。
からっと晴れた外から下りてくる温かな日光は、まだ厳しい冬季の肌寒さを残しているものの訪れた春の優しさに満ち溢れていた。
後に六年戦争と呼ばれる第三国家フェンネルの壮絶な戦争が終幕を迎えてから、この国は三ヶ月の歳月を迎えていた。
戦争が終わっても、荒廃した首都や農村部、そして多くの国民には拭えない傷が残っていた。神の呪いも解け、国家も再興の道を歩むこととなり、何もかも新しく作り変えねばならない大変な時代が到来したのだ。
そのためには、まず国家がしっかりしていなければならない。
戦争で生き残った国家騎士団と革命派であったアレスの使者の面々は、元々互いに殺し合っていた仲であった故、戦争終了時は何かとぎくしゃくとしていたが…今では少しずつ、お互いを認め合う様になってきている。