アイズ
「さて、そろそろお仕事しますか!」

 ニコリと笑った少女は先ほどと同じように悪魔に向かって手を翳す。そして先ほどとは違う言葉を紡ぐ。

「座標を設定。転送先を確認。……転送!」

 言い終わるやいなや悪魔は別の黒い光に包まれ遠く彼方に飛ばされていった。それを見送った少女は乱れた長い髪を整えながらため息をついた。

「ちょっとくらい手伝ってくれてもいいじゃない」

 いつの間に近づいたのか、少女の背後には黒い服を纏った青年が立っていた。長身に金髪、黒を纏った躯体はモデル並みのスタイル、極めつけは他に並ぶものはいないだろうと思えるほどの超絶イケメン。ただ一つ、

「この俺様が手伝うわけないだろ。なんのためにお前と契約したと思ってるんだ」

 この俺様な性格だけが欠点である。

「わかってるよ!でもか弱い女の子を走らせるなんて、男として何も思わないわけ?」

「残念だがそんな感情は持ち合わせていない。俺様は悪魔だからな」

 青年はニヤリと笑みを浮かべる。世の女性が見たら卒倒するような極上スマイルだが、少女には黒い笑顔にしか見えない。少女は無表情で青年を睨みつける。二人の間に微妙な空気が流れる。先に折れたのは少女の方だった。

「はぁ。相手にするだけ無駄ね」

「わかればよろしい」

 青年はさも自分は間違っていないというような顔をしている。少女はその顔を見て呆れていた。

「あっそうだ!ちょうど人間の姿なんだし、買い物つきあってよ。荷物くらい持ってくれてもいいでしょ?」

「しゃーねーな。今回だけ付き合ってやるよ」

「さっすがセルフィ。大好き!!」

 少女は青年に抱きついた。青年は気にする様子もなく「はいはい」と少女の頭を撫でながら適当に受け流す。それが二人の日常。
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