アイズ
 少女の名は一黎杞(にのまえれいこ)。訳あって中学1年生の時から偽名で生活している。表ではただの高校2年生だが、裏ではいたずらに人間界に干渉した悪魔を元の世界へ送り返すという仕事を担っている。

 青年の名はセルフィ。黎杞と契約した正真正銘の悪魔である。黎杞とは四年前のある事件で出会い、契約するに至った。

 普通の人間は知らないが、この世界にはセルフィのような存在が複数存在し、そのような存在を『異界者』と呼んでいる。現在確認されている『異界者』は『悪魔』『天使』『妖精』『亡霊』『死神』の5種類である。彼らはまれに人間と契約を交わすことがある。彼らと契約を交わした人間は契約者と呼ばれ、彼らの眼と能力の一部を譲り受ける。契約者はそれと引き換えに大事なものを代償として支払わなければならない。それが、この世界の隠された真実なのである。



「ねぇセルフィ。あの子、何してるんだと思う?」

「あぁん?」

 夕食の買い物を済ませた黎杞とセルフィは夕焼けに染まる街を並んで歩いていた。黎杞が見つけたのは歩道橋の上で佇んでいる一人の女の子だった。酷く暗い顔をしている女の子は今にも飛び降りてしまいそうな雰囲気を醸し出している。

「まさか、飛び降りたりとか、しないよね?」

「……そのまさかかもな」

「だったら止めなきゃ!!」

「ちょっ、レイコ、待てよ!」

 黎杞はセルフィの制止も聞かず、女の子のもとへ駆けだした。
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