Adagio
「学科は違うけど、トモも同じ大学にいるよ。お昼の時間によく会うの」
「音楽療法士になるんだっけか…。奏と同じ大学に行くなんて、どんだけバカなんだと思ったけど」
「…サイッテー」
そんな言い方ってないと思う。
確かにアタシはバカだし、受かったのだって奇跡だと思ったけど。
だけどその奇跡をもらえるぐらいには、頑張ったんだ。
「冗談だよ。…頑張ったもんな」
こういう風に頭をなでられると、時々訳がわからなくなる。
だってアタシたちって、結局何なの?
恋人なのか、恋人じゃないのか。
「好き」とは言ってないし、言われてない。
恋人っぽいことも特にしてない。
デートだって、半分冗談みたいな響きで使ってるし。