Adagio


「学科は違うけど、トモも同じ大学にいるよ。お昼の時間によく会うの」

「音楽療法士になるんだっけか…。奏と同じ大学に行くなんて、どんだけバカなんだと思ったけど」

「…サイッテー」


そんな言い方ってないと思う。
確かにアタシはバカだし、受かったのだって奇跡だと思ったけど。

だけどその奇跡をもらえるぐらいには、頑張ったんだ。

「冗談だよ。…頑張ったもんな」

こういう風に頭をなでられると、時々訳がわからなくなる。

だってアタシたちって、結局何なの?


恋人なのか、恋人じゃないのか。

「好き」とは言ってないし、言われてない。

恋人っぽいことも特にしてない。

デートだって、半分冗談みたいな響きで使ってるし。


< 220 / 225 >

この作品をシェア

pagetop