Adagio


バン!

両手ででたらめに叩いた鍵盤は言いようのない不協和音を織り交ぜて俺たちを突き刺す。


「どういう意味だよ」

本気で聞いているのにこいつは聞く耳を持っていないらしい。

「あ、アタシは増原奏子(マスハラ ソウコ)ね。ダサい名前っしょ。普通科2年」

「話聞けよ」

「どういう意味かってやつ?…だって、あんたらも普通科のことバカにしてんでしょ?それと同じことしただけなんですけど」

てか、大事な楽器そういう風に使うとヤバいんじゃない?


そう言われて、図星だっただけに顔が熱くなる。

イライラ、イライラ、針金のように鋭いトゲが胸の中に蓄積されていく。


「合唱の追試なんだろ?早く行けよ!話しかけんな!」

「あー、はいはい。邪魔してごめんなさいね」

面倒くさそうに言って、やっとドアが閉まる。



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