Adagio
合唱の追試があるならさっさとそっちに行けばいいのに。
「そこまで言うからには理由があるんだろうな」
ここまで侮辱されて一筋縄で帰すわけがない。
だけどそいつは俺の質問を無視して問いを重ねてきた。
「アンタ、名前なんてーの?」
あまりに不躾な態度に呆れて、返答に時間がかかった。
「…なんでそんなこと教えなきゃいけないんだよ」
「はぁ?なんでそんなケンカ腰なわけ?…あぁ、名前を名乗るからにはまずこっちが名乗れってね」
わざとらしく吐かれるため息がうっとうしい。
今日初めて会った奴に気安く名前を教えるほど無防備なわけじゃない。
「さっすが音楽科。お高くとまってんねぇ」
まるでバカにするように突き出された言葉。
正直言って我慢ならなかった。