誠姫




なので大きな綺麗な桜なら、腐るほど見てきたはず。



なのに、今さらそんな言葉が出た。




そして、運が良いのか悪いのか、その声を捕らえた者が居た。




「こんな時間に女の子が一人で何してるの?」




突然背中にかけられた言葉に、姫芽は警戒心と共に勢いよく振り向き、声の主を確認した。




「だ、誰!?」




暗くてよく見えないが、確実に男の声だった。



男はどうやら数人を引き連れているようで、警戒心が指先まで通っている姫芽は一歩身を引いた。



そして男が右手を腰に当てたのと同時に、カチ…という音が小さく聞こえた。




そして何やらスーッと棒のようなものを引き抜いた。



刀だ。




見慣れない物で理解するのに時間がかかってしまったが、男が手に持つそれは、確実に刀であった。



もはや、恐れることしか出来ない。



姫芽は背中に大量の冷や汗を流し、後ずさりを続ける。




と、月の光が反射して男の顔が見えた。




< 12 / 74 >

この作品をシェア

pagetop