誠姫




「ほんっとうに暇なの!!土方!!何とかしなさいよ!!」



「はあ!?何で俺が!?」



姫芽の驚きの発言に、土方の真っ当な返事。



姫芽は意味も無く髪の毛を結び直し、土方の近くへ数歩足を動かした。



「こんなに暇な時間が続くのは初めてだわ!少しくらい私の相手したらどうなの?」



「俺は仕事中だ!そんな時間ねーんだよ!」



「悠は仕事を放ってでも私が暇だと言えば相手をしてくれるわ!」



「そいつダメじゃねーか!」



「悠を悪く言わないで!!」



「あーも分かった分かった。頼むから静かにしてくれ」



これ以上の言い合いは不要だと分析した土方は、鬱陶しそうに姫芽を払いのけた。



「何よ・・・・」



ふてくされながら土方の背中を見つめる姫芽は、ぶつぶつと独り言ちり始めた。



「私が暇なのは全ては雨と土方が悪いのよ・・・ここに来て屈辱ばかり。皆私の立場を理解出来ていないんだもの・・・西園寺家の一人娘がこんな扱いを受けていいと思ってるのかしら、全く・・・」



そんな雑音でも土方の耳にはしっかり届いており、一度切れた集中力はなかなか元には戻らない。



< 63 / 74 >

この作品をシェア

pagetop