使者の黙示録

・神の配慮

ずっと奥まで広がる廃墟が、しんみりと哀愁を漂わせる。

ふと、ある疑問がルゼの心に膨らんでくる。


「確かに凄まじい地震だったが」


そう言う彼女の顔に、腑に落ちない思いが浮かびあがる。


「ビルもマンションもスーパーも、これほど簡単に倒壊するものだろうか?」


あらゆる建造物は、ルゼの身長よりも高い部分を残すことなく崩れ去り

手抜き工事をしていたとしか思えないありさまだ。


「ああ、それはね」


団司は、だいぶ明るくなってきた空の下で、キョロキョロと瓦礫を見わたす。

なにかを見つけたらしい団司は、そっちの方へ足を進ませて行く。

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