キミは嘘つき蝶々
「片桐君?大丈夫?」

「うおっ!?」

意外に近い距離に松宮の顔があって、俺は思わずビビり声を上げてしまった。

二三歩離れて、ばくばくしてる心臓を押さえる。

一瞬キスしてしまうかと思ったじゃねーか。

気持ち悪い。

「カンナちゃんのカバン、やっぱり僕が渡しておくよ
宿題も入ってるだろうし」

小首を傾げながら爽やかに催促する松宮に、しぶしぶながらカバンを渡した。

さっきの彼女の出現でなんとなく毒気を抜かれていて。

これ以上松宮と渡す渡さないの争いを続けるのも馬鹿馬鹿しかった。

「さっきの、だれ?」

門の方に顔を向けながら問う。

「………」

なんか妙な沈黙が流れて、訝しがりながら松宮を振り返ると、やつは固い表情で俺をみていた。

「誰に見えた?」

「は?」

まさかの問い返しに眉をしかめる。

「誰って……森口……の姉妹?」

「……ま、ね」

歯切れの悪い松宮に軽くイライラしていると、松宮はふっと表情を和らげて微笑んだ。











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