恋する*spring~春をうられたわたし~【完結】
泣いて落ち着いたわたしは、わたしを抱きしめている男を見上げた。
男は目が合うと、優しい笑顔になった。
また泣いてるところを見られたからか、恥ずかしくて目線をずらして男に聞いた。
「そういえば、名前……なんですか?」
「名前?あぁ、言ってなかったな。
俺は、黒崎翡翠-クロサキヒスイ-だ」
黒崎翡翠………
見た目もすごいけど、名前も負けてない。
名前通りの人って感じがする。
「さて、そろそろ行こうか」
最後に頭をぽんぽんっとすると、体を離して男は言った。
行くってどこに?
そう思っていたのもつかの間、翡翠はコートを着て右手にわたしの荷物を持つと左手でわたしの手を握り、そのまま歩き出した。
えっどこに行くの?
しかも歩くの早い。
わたしは小走りになって、着いて行った。