雨宿り

【其の一】




あ~き、緊張するぅ~

何でこんな約束したんやろ。

お昼ご飯作ったげるなんて。

いつものお弁当ならともかく、アイツの家でお昼ご飯作らなあかん。

事の発端は、アイツが

「明日あさって、親父達親戚の法事でおらへんねん」

「ふ~ん。ちゃんとお留守番するんやで。ご飯もちゃんとしたもん食べなあかん で」

明日は土曜日やから学校はお休み。

だ から、お弁当作りは無し。

「美桜ちゃ~ん」

うん、何、その猫撫で声は。

「明日、デートしよ。そしたら飯食える」

「ご飯の為のデートか。それやったらお昼ご飯作ったげるわ」

思わず言ってしまった。

「ほ、ほんま。ほんまに昼飯作ってくれる?わ~ お、俺、めっちゃ嬉しい!」

子どもみたいに喜んでるのに、断れへんようになった。

あ~自分の口の軽さを恨む。

渉の家で…

彼氏の家で…

そ、それもこないだお見舞いに一回だけ行った家で…

勝手に台所借りて作ってもええんか?

渉のお母さん、ちらっと一回だけ会ったよう知らん女の子が勝手に台所使って厭 がらへんやろか?

考えたら…頭が爆発しそうや。

惚れた弱みってのか、渉の笑顔見たら嬉しいし、いっぱい見たいし。

しゃーないな。

腹括って出陣しよか。
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