雨宿り




おもんない!

「何、恐い顔してんのん?」

「へっ?あ、何でも無い」

「そう。あ、もう最後の花火やで」

「あ、あぁ」

この日一番大きな花火が上がった。

「そろそろ行こか」

「あっ、そやな」

「ほんとにどうしたん。何か変やで」

美桜が、俺の顔をじぃーと見つめる。

「アイツ誰やねん?」

「アイツ?アイツって?」

「さっきの男前」

「男前? あ、裕の事?」

「……」

「去年までお隣りさんやってん。お父さんの仕事の都合で引越したんやけ ど。こっちにおばあちゃんがいるさかい帰って来たんやて」

お隣りさん?

幼なじみか?

い、いや

もしかしたら恋人やったんちゃうやろか。

「それがどうかしたか?」

「へっ、い、いや」

俺、完全にヤキモチ妬いてる。

「ほんと、背ばかり伸びて。あれで中二やで」

「へっ?ち、中二?」

「うん。バレーボールやってと伸びるんかなぁ」

「……」

中二って…

俺、

「ハハハ……」

急に笑い出したから、びっくりして

「ほんと大丈夫か?暑さでおかし なってんのちゃう?帰ろか?」

美桜が心配そうに俺の顔を覗き込む。

そんな美桜を抱きしめる。

「ち、ちょっと…ひ、人が」

「かまへん、誰に見られても」

「う、うん」

俺の胸に顔を埋める。

「俺、アイツにヤキモチ妬いてた」

「えっ?」

顔を上げ俺を見る。

「な、何で?裕は、まだ子どもやん」

「見た目はアイツ背も高いし、イケメンやし…美桜の彼氏やったんちゃうかなって思うてしもたんや」

「アホ…」

美桜は、ニッコリ微笑んで

「うちの彼氏は…あんただけやん。後にも先にも渉だけ…」





※Fin*











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