雨宿り
「もう一つの方も開けて」
「あ、うん」
もう一つあったな。
クッキーの箱より大きい。
リボンを解き包み紙を剥がす。
あっ、こ、これは!?
「スニーカー」
「うん」
だいぶ前のデートの時、『ええなぁ、 欲しいな』って俺が言ってたスニーカーや。
ちょっと高価やから諦めたスニーカー
美桜…覚えてくれてたんや。
「気に入ってくれた?」
美桜がか細い声で聞いてくる。
俺が気に入るかどうか心配してんのか。
「当たり前やん。俺、めっちゃ嬉しい。ありがとうな。高かったやろ」
ファミレスのバイトって…これの為か?
「ええねん、ええねん。渉が気に入ってくれたら」
美桜…
思い切り抱きしめて
「これの為にバイトしてたんか?」
美桜が身体を固くした。
「な、何で知ってんのん?」
「うん、まぁ、ええやん」
「う~ん。ほんまはお姉ちゃんがファミレスでバイトしてんねん。オーストラリアに旅行行ってる間、ピンチヒッターでバイトさせてもろたんや。だから二週間だけ。べ、別に渉の為だけちゃうから気にせんといて、な」
そういうことやったんか。
知らんかったとはいえ二週間、美桜に悪いことしたな。
「渉?」
「うん。ほんまにありがとうな」
「もう、ええって…これで同い年になったな」
照れ隠しにそんなこと言ってる。
「そやな…美桜…」
「うん?」
「ごめんな」
「何が?」
「俺、美桜の誕生日にプレゼント渡してへんやん」
「しょうがないやん。私、4月5日やし…その時まだ渉の事知らんかったやん」
「俺は知ってたけど」
「誕生日まで知らんかったやろ」
「あっ、うん」
そこまでは調べてなかった。
大体、春休みやし。