ロシアンルーレットⅢ【アクションコメディー】
「何が30秒だ、ふざけんなっ! 髭剃る時間ぐらいくれって」

取り敢えず、行くことには同意するとしても、ここだけは譲れない。


「30秒で無理ならボッサで来い」

どうでも良さそうに一言であしらわれた。



少年のようなキュートさが売りの俺。

髭ボッサのむさ苦しい顔を人前に晒すなど、とんでもない。決して犯してはならない禁忌だ。



「ちょっ……簡単に言わないでくれる?  どうせ谷口さん、自分だけ顎鬚整えて来るんだろ?」


言っている間に、ボボボボ……と低いエンジン音がマンションの下で鳴り響く。



「もっかい窓割られてぇか?」

電話越しの声が威圧感たっぷりに低く囁いた。



「『整えて来る』んじゃなくて――

もう『来た』のね……」

 
俺は、全てを諦めた切ない気持ちを、口からポトリと落とした。


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