ロシアンルーレットⅢ【アクションコメディー】
急な斜面を一息に駆け上れば、谷口の息があがった。肩を軽く上下させて深い呼吸を繰り返し、乱れた息を整える。



無駄に広いスペースに、アルミトラックが一台停車してあった。

運転席にはキャップを目深に被った作業着の男。



戦略を練っている時間はない。



谷口はアルミトラックに迷わず近付き、男に気付かれないよう慎重に、助手席側へ回り込んだ。



おもむろに助手席のドアを開け、ステップ台に片足を掛けて蹴り、両手を天井に引っ掛けた。

両腕だけで全体重を支え肘を折り、丸めて持ち上げた身体を惰性で中へ掘り込んだ。そして、弾かれたように谷口の方を向いた男の呆けた顔目掛け、両足を勢いよく伸ばした。


男の頭が窓ガラスに叩き付けられ、谷口の靴底との間で潰れた。



余りの衝撃に朦朧として、細い呻き声を上げる男に向かって、

「蜂須賀の仲間か? 違ったら悪い」

谷口はヘラリと笑って言い、運転席側のドアにクタリと身を委ねて全く動く気配のない男の両手を、手錠で拘束した。


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