眠り姫はひだまりで
*
「……そっか…大変だったね…」
私が話し終えると、大和は私を励ますように静かに笑った。
「……なんか、あれだね。めんどくさい」
大和の意外な言葉に、私も笑ってしまった。
「…私は…まだ、先輩を完全に振ることが、できてないのかな…」
再び輪飾りをいじりながら、下を向く。
「いや、そんなことないよ。必要以上に傷つけたくないって気持ちは、いいことだし。僕はこれ以上言わなくてもいいと思う」
「そ…そう、だよね!よかった…ありがとう」
ほっ。
よかった…。
「先輩だってそんな悪い人じゃないんだもんね」
ちょっとしつこいけど。
周りがどう思っていても、私のなかの先輩は、私がみたまんまの先輩なんだ。
すると、大和は「んー」と唸った。
「…でも…このままだと女の方の先輩が面倒そうだし……なんかしないとね」
「な…なんかって?」
「それはまだわかんないけどさ」
大和はシャーペンを持って、カチカチ、と鳴らす。
「僕も色々考えとくから、とりあえず色葉は今まで通りでいーよ。今まで通り、先輩と話したらいい」
「いいのかなぁ…」
「いいんだよ。結局その女の先輩達は、色葉と斉藤先輩を引き離したいだけなんだし」
「………うん」
「下手にひどい振り方して斉藤先輩が色葉に逆恨みでもしたら、それこそめんどくさいよ」
…確かに。
先輩達と私の願い…っていうか望みは、結局同じなんだ。
なら…。
「…と、とりあえず、今まで通りいくよ」
どうするかは、これから考えよう。