眠り姫はひだまりで




「……そっか…大変だったね…」

私が話し終えると、大和は私を励ますように静かに笑った。

「……なんか、あれだね。めんどくさい」

大和の意外な言葉に、私も笑ってしまった。


「…私は…まだ、先輩を完全に振ることが、できてないのかな…」


再び輪飾りをいじりながら、下を向く。


「いや、そんなことないよ。必要以上に傷つけたくないって気持ちは、いいことだし。僕はこれ以上言わなくてもいいと思う」


「そ…そう、だよね!よかった…ありがとう」

ほっ。
よかった…。

「先輩だってそんな悪い人じゃないんだもんね」

ちょっとしつこいけど。

周りがどう思っていても、私のなかの先輩は、私がみたまんまの先輩なんだ。

すると、大和は「んー」と唸った。

「…でも…このままだと女の方の先輩が面倒そうだし……なんかしないとね」

「な…なんかって?」

「それはまだわかんないけどさ」


大和はシャーペンを持って、カチカチ、と鳴らす。


「僕も色々考えとくから、とりあえず色葉は今まで通りでいーよ。今まで通り、先輩と話したらいい」

「いいのかなぁ…」


「いいんだよ。結局その女の先輩達は、色葉と斉藤先輩を引き離したいだけなんだし」

「………うん」


「下手にひどい振り方して斉藤先輩が色葉に逆恨みでもしたら、それこそめんどくさいよ」


…確かに。

先輩達と私の願い…っていうか望みは、結局同じなんだ。

なら…。

「…と、とりあえず、今まで通りいくよ」

どうするかは、これから考えよう。

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