眠り姫はひだまりで

思わず走ってきちゃったけど、そして声かけちゃったけど。


えーとえーと、と考えて、私は自分の横に揺れるピンクの物体に気づいた。


「…は、はい!いる?」


ずい、と。

男の子に差し出したのは、ゲーセンでもらったピンクの風船。


………男の子…だし。

ピンクは、嫌かな。


男の子は、しばらく私の顔と風船を交互に見つめたあと、おずおずと手を伸ばしてきた。

そして、「ありがとう」と言いながら、風船のひもを握る。

男の子の涙も止まった。

良かったぁ…


「えっと………お母さん、どこに行ったか、わかる?」


風船を見つめながら、男の子が首を横に振る。


< 289 / 587 >

この作品をシェア

pagetop