十五の石の物語




(お可哀想なレヴさん……サリーさんことを聞かれたら、どれほどお嘆きになられることかしら……)

ジネットは、壁に吊るされたドレスをみつめ、愛し気にそれを撫でた。



(サリーさん……あなたはどうしてあんなことを……一体、なにがあったの?)







数日前のことだった。
ただならぬ様子で、ヴェールが倒れこむように宿に戻って来た。
ヴェールは三人の知り合いと思われる老婦人に付き添われて部屋に入り、二人はそのまま部屋から出ては来なかった。
何があったのか気にはなったが、自分からは聞いてはいけない雰囲気がしてジネットはじっと待っていた。


次の日の朝、ジネットは老婦人からサリーのことを聞かされた。
その話は、ジネットにはとても信じられないことだった。
サリーがそんなことをする理由がわからない。
ジネットはそのことについて訊ねたが、老婦人もそれはわからないとだけ答えた。
そして、綺麗な包みと小さなメモを手渡された。



そのメモにはこう書いてあった。

『愛するジネットへ
私には似合わないから、良かったら私の代わりに着て下さい。
どうか大切にしてね。』

たったそれだけの短いメモだった。



サリーがどうしてそんなことをしてしまったのか、ジネットにはまるで見当がつかなかった。
ドレスがどういうものなのかも皆目わからない。

サリーはもうこの世にはいないということさえもが、まだジネットには信じられない想いだった。



(……サリーさん…なぜ……)

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