10センチメートル☆ロマンス




「これ買うなら俺、店知ってるよ」

「じゃあ、そこ行ってみよ」

「この道具はやっぱり専門店じゃないと無理かなぁ」

「……そうだねぇ」

「………」


 佐伯くんがいきなり黙ったから、手元のプリントから視線をあげた。



「どうか…した?」


 佐伯くんの視線は……私に注がれてる。




「……ううん、何でもない」



 目をゆっくりそらし、いつものように笑うと、

「早く行こう!店閉まっちゃうから」

 そう言って急に立ち上がり、私の手を掴んだ。



「えっ? ちょっ…」


 私は掴まれた手が気になって戸惑うけど、佐伯くんは何も気にせず喫茶店を出て駅に向かう。




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