- π PI Ⅱ -【BL】



「え!桐ヶ谷っ!」
「ヒロっ!!」


俺と刑事の声が重なり、二人同時に駆け出す。


桐ヶ谷は足が速い。そうだ、確か高校時代はサッカー部だとか言ってたな。


て冷静に考えてる場合じゃねぇ!


どうしたって言うんだよ!桐ヶ谷っ!!


バタン!


乱暴にマンションの扉を開けると、桐ヶ谷は俺たちの追跡から逃れるように寝室のベッドに潜り込んだ。


「桐ヶ谷、ごめん!俺が悪かったよ」


慌てて寝室に駆け込んだ俺が布団の上から桐ヶ谷は揺すったが、桐ヶ谷は出てくる気配をみせない。


「ヒロ!見ろ♪ヒロジだぞ~?ほらっお花のカチューシャもついてるぞ?」


なんて変態刑事はヒツジのぬいぐるみを、ふらふら。


あのお弁当バッグについてる…もう一回り大きなヒツジのぬいぐるみ。


てか“ヒロジ”って何!?


あんた、桐ヶ谷を何だと思ってンだよ。


だけど桐ヶ谷は布団からにゅっと腕だけを出すと、ヒツジのぬいぐるみだけを刑事からあっさり奪っていった。


「失せろ、変態どもめ」


布団の中からくぐもった声が聞こえ、刑事は諦めたように肩をすくめた。


「こうなったら何をしても無理だ。とりあえず一人にさせよう」


刑事に従い、俺もヤツに続いて部屋を出た。















< 164 / 188 >

この作品をシェア

pagetop