- π PI Ⅱ -【BL】
「公然わいせつか?それとも暴行罪?どっちの罪でぶち込んで欲しい」
ふいに頭上から低い声が降って来て、ぐいと俺の腕を捻り上げる。
俺の唇は桐ヶ谷のそれに重なることはなかった。
そして腕を持ち上げられて、俺は驚いたり、痛かったりで複雑に顔をしかめる。
「―――周…」
桐ヶ谷が呆然とした声で弱々しく聞く。
目の前の刑事は―――いつみてもキマっていて、俺なんか太刀打ちできないほどかっこよくて、ついでに強そうだ。
刑事に掴まれた腕が痛い。
「………なんでここに…」
「お前が心配だったからに決まってるだろ?三好と飲みに行くって言ってたから、こんなことになってるんじゃないかと思ってた。
さ、帰るぞ」
ついでに言うと勘もいいな。さながら姫を守るナイト登場ってとこ―――か…
刑事は桐ヶ谷の手を取ると、歩き出そうとする。
その手を桐ヶ谷は乱暴に振り払った。
パシッ
と乾いた音を立てて、桐ヶ谷が目を吊り上げた。
単なる照れ隠しではなさそうだった。目が真剣だったし―――…どこか怯えているようでもある。
「俺に触るな!」
叫ぶように言うと、桐ヶ谷は何かから逃れるように走り出した。