- π PI Ⅱ -【BL】
しょうがないよ。
周は刑事だ。市民の平和を守るのがあいつの仕事で、使命だ。
中身変態なくせして、そうゆう正義感だけは妙に強い。
でも、よりに寄って何で今日なんだよ。
俺の中で汚い感情が首をもたげて不快感でいっぱいになる。
俺は慌てて首を振ると、ちょっと大きく息を吸い込んだ。
周の愛用している香水に混じって、ほんの僅かにタバコの香りが香ってくる。
あいつの香りで包まれているはずなのに、あいつは今ここに居ない。
主をなくした部屋が急に寂しく、広く見えた。
それでもあいつをもっと近くに感じたくて、俺はもう一度息を吸い込んだ。
ふと刹那さんの言葉が蘇る。
『全てにおいて偶然なんてないわ。このタバコも、偶然じゃない』
あの人も…ホント意味不明だよな。
「はぁ~」
大きくため息を吐いて振り返ると、
「あら。大きなため息♪」
と、刹那さんがにこにこ笑顔を浮かべてダイニングチェアに腰掛けていた。
「な、何故居るーーー!!」
びっくりして思わず後ずさると、刹那さんはちょっと色っぽく微笑んでこの部屋の鍵をふらふらさせた。
「周から鍵を預かったの♪あなたを宜しく♪ってね」
周が―――…?
いやいや…それにしてもこの人、まるで気配を感じなかったよ。
何者?
って聞く俺が間違ってるか。何せこの人は周の従姉弟だし。
ってか良く周がこの部屋の鍵を渡したな。
「心配しないで?あなたに手を出したら報酬がゼロになっちゃうから」
刹那さんはちょっと考えるように首を傾けて、僅かに微笑んだ。
ってか報酬??金払ってンのかよ、あいつ。
「そ・れ・と。寝室には入らないから安心して?何せ強力なバリアが張ってあるから」
なんて言って刹那さんは寝室の方をちょっと目配せした。
バリア?
慌てて振り向くと、寝室の扉にいつの間にか一枚の紙切れが張られていた。