- π PI Ⅱ -【BL】
“禁!蜘蛛女!!”と血文字(?)で書かれていて、その下に同じ文字で
“I LOVE HIRO”とちょっと歪んだ英字が書かれていた。
ヒステリックに書かれた赤い字は少しばかり歪で、それが余計怖かった。
愛を囁かれてる…って言うより、むしろ呪いだな。
水族館デートが中止になったというショックが、この一瞬で吹っ飛んだ。
「で、刹那さんは今日一日ここに居るんですか?」
「そ♪一日♪♪」楽しそうに声を弾ませると、ガタンと椅子を鳴らして立ち上がった。
スタスタと俺の元に歩いてきて、俺の鼻の頭をちょっと押さえる。
「あなたに情報提供♪周が追いかけてる事件は例の強盗事件よ。ついでに言うとその犯人は昨夜また犯行を行った。
被害者は21歳の大学生の男。合コン帰りで酔っ払ってたところを襲われたらしいわ」
「21歳……男……」
刹那さんの言葉を確認するように、俺は彼女の言葉を復唱した。
「被害者は例のごとく乱暴されたあと、ナイフで数箇所刺されている。凶器の判別は警察ではまだまだついていないけれど、刃渡り10cmほどの中型ナイフ。
サバイバルナイフかしらねぇ」
どこか他人ごとのように言う刹那さんを見て、俺は気になったことをおずおずと聞いた。
「その学生は怪我で済んだの?それとも―――」
いいにくそうに言葉を濁すと、刹那さんは軽く肩をすくめた。
「命に別状はないものの、今は集中治療室よ。全治3ヶ月ってとこかしら」
亡くなってはいないようだ。そのことにとりあえずほっと安堵する。
でも、刹那さんの口からスラスラ出てくる情報に驚きつつ、その出所が気になった。
今日は日曜日だから新聞もなければ、ニュースもまだその情報を流してない。
「あら♪あたしの得意技を忘れたの?」
と刹那さんは小さくウィンク。
そうだった……
このひと、ペンタゴンに侵入したことあるんだっけね。
警視庁のコンピューターに入ることぐらいなんてことないってわけか。
それにしても―――
それって犯罪じゃね!?