- π PI Ⅱ -【BL】


「じ、実家!?どーしたんだ、ヒロ!!俺が電話に出たことがそんなに気に食わなかったのか?


はっ!それとも、もしかしてちょっと前にヒロの風呂を覗いてたことがバレた?それともヒロの着替えを隠し撮りしてたことか。それとも…」


珍しく周があたふたと、慌てて俺の肩を掴んだ。


お前…そんなことしてたのかよ。正真正銘の変態野郎だな。


「分からなかったらいいよ」


俺はそれでも乱暴に振り払って、勢いよくマンションを飛び出した。





「ヒ、ヒロ~~~!!」





と周の叫び声が聞こえてきたが、そのすぐ後にまた電話の音が聞こえてきた。


あのケータイをぶっこわしてやりたい。


いや…電話に出たこと自体はもういい。色んなことが俺の中で溜まっていたんだ。


どうしようもない嫉妬からくる悲しみ、寂しさや不安が。


仕事だから、なんて今は割り切れない。





俺って心が狭いのかな…




――――

――


とぼとぼと歩いて、ほとんど何も考えずに俺はいつの間にか会社の周辺に来ていた。


実家に帰る、なんて言ってしまった。


完全に、嫁が旦那にキレたときの台詞だな。昼ドラなんかでよく見るけど


まさか自分の口から出るとは。


しかし…俺の実家はずっと遠くだし、ついでに言うと半年ほど前まで住んでいたアパートも周がいつの間にか勝手に解約してたし。


俺、行くとこないじゃん。


がくり、とうな垂れていると、


「あれ?桐ヶ谷?」


聞き慣れた声が聞こえてきて、俺は振り返った。





< 66 / 188 >

この作品をシェア

pagetop