さあ、俺と秘密をはじめよう


別に朝に親がいないのは珍しくもない。

逆にいたら珍しい方だ。


いつもいつも仕事、仕事で私には見向きもしない。

淋しいなんていう感情なんかとっくに忘れてしまった。

(だって、この家には温かさなんてないもの)


時々帰ってきたと思ったら、私の顔を見ず生活費だけを置いてすぐ仕事に行ってしまう。


(こんなの家族なんかじゃない…)


私は顔を横に振り、両手で顔を叩き気分を改めた。

よし、と外に出た。


ランニングしながら、発声練習のためいつも通りの公園に行った。



ここは港が近くにあって、海が見える場所で平日でも人通りが多い。

夜には夜景が綺麗で人気スポットでもある。

緑もいっぱいで、少し歩けばテニスコート、バスケットコートもある。

とにかく広さでいえば一番の公園。

だからこそ発声練習にはもってこいの場所だ。


「あめんぼあかいなあいうえお」


早朝だから人は誰もいないし、気が楽だ。

どんな大きな声で言っても誰にも聞こえない。



たぶん歌っても、誰も星だとは思わないだろう。

気付かれない自信が私にはあるのだ。

星の声は中世的で、声のトーンとかも調整してるし、

男、女とかばれない声を常に保ってるし。

女声バージョン、男声バージョンしてるからばれない。

それはもうプロ顔負けの声優並みの演技力と声質、声量それらすべてが星にはこなせるのだ。


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