ファンファーレに想いを乗せて

崩壊


走って走って、たどり着いた昇降口で、


「あずさっ!」

と大好きな声が後ろからしたかと思うと、ぐいっと右手首を捕まれて、その反動で、くるりと振り向けば、目の前には、はぁはぁと息を切らした加藤が真っ直ぐな眼差しで、私を見ていた。


「っ……」

言葉が出てこない。

何か言いたいのに、言ったら涙まで出てしまいそうで、ぎゅっと唇を噛んだ。


カオルさんって、加藤の好きな人なの?

だから、あんなにキラキラした笑顔を見せたの?

そんなに彼女が好きなの?



だったら……

なんで、私を“あずさ”なんて呼ぶの?

誤解しちゃうじゃない。期待しちゃうじゃない。

少しは私のこと、気にしてくれてるのかなって思っちゃうじゃない!


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