きみ、ふわり。


 答えられずに黙ったままでいると、

「好きなんだろ?」

 と。
 全てを見透かしたような目で悠斗が俺を見る。


「は? 俺、好きとかで女抱く訳じゃねぇし」

「『そこに穴があるから』って、またそれか。
 もう聞き飽きた」

 いや俺、そんなこと一言も。
 『穴があったら入れたい』派だと言ったんだ。

 微妙にニュアンスが違うんだよ。
 日本語というのは、お前が思っているよりもずっと奥が深いのだ。



 携帯の着信音が短く鳴り、悠斗はそれを確認すると、

「俺、帰るわ。
 『ほのか』のうんこ、終わったみたいから」

 自分の彼女のデリケートな事情を、平然と暴露しつつ立ち上がる。


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