きみ、ふわり。


「もう、一々うるさいよ、男のくせに」

 栗重は俺の方など見向きもせず、忌々しげに毒づいた。


「ブー、栗重みなみ、それお前の固定観念。
 お前は視野が狭すぎるわ、愚か者。
 男がうるさくないなんて定義、どこにもないからね。
 もしかして寡黙が美徳とか古臭いこと思ってんの?
 バカじゃねぇの?」

 とうとう栗重は立ち止まって、俺を振り返って見上げた。



「『クールでカッコイイ』瀬那くん」

 不気味に微笑んで俺を呼ぶ。
 いかにも、俺が『クールでカッコイイ』瀬那くんです。

「はい、何でしょう?」

「お願いだから黙って」

 そう一言だけ捨てるように吐いて、問答無用とばかりに再び歩き出す。
 俺の腕を脇にガッチリ抱え込んで。


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