きみ、ふわり。


「違った、俺、ただの『カッコイイ』瀬那くんだった」

 などと足掻いてみたけれど、「何を今更」と冷ややかにあしらわれた。
 くそっ、糞、うんこ……



 けど正直、その気になれば、いつでも振り払って逃げられた。
 何だかんだ言っったって、栗重は女だからね、一応。

 紗恵が気になった、放っておけなかった。

 ウダウダ文句をたれながらも、気分は既に、ヒロインを救出に向かうヒーローだった。
 俺、永遠の少年だから、ピュアだから。



 あと数メートルで西昇降口という所まで来た時、そこから出て来た一組のカップルが目に留まる。

 紗恵と……
 誰? あの男?


 男は紗恵の腰に厭らしく腕を回し、不必要なほど二人の身体は密着していた。

 何あれ? 何なのあれ?
 激しく不愉快なんですけど。


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