きみ、ふわり。


 眉根を寄せ紅潮させた顔で、紗恵は訴えるように潤んだ瞳で俺を見詰める。

 それ、痛いからやめて欲しいと思うのは俺の我儘だろうな、きっと。


「私は、鏑木先輩の彼女になりたいとか、そんなこと思っていません。
 ただ、抱いて欲しいだけです。
 絶対に迷惑はかけませんから」

 それは俺を想っての言葉であるはずなのに、何故だか無性に寂しくなって胸がズキンと痛んだ。


 泣きそうな顔をして、それでも泣かない紗恵は見ていて辛くなるから嫌だ。
 でもそんな風にさせているのは、紛れもなく俺で。

 掛ける言葉が見付からない。



 どうして俺なんかにそこまで?

 そんな疑問ばかりが頭の中をグルグルグルグル駆け巡る。


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