きみ、ふわり。


 ほんの一部分が軽く触れているだけなのに、全身がポカポカと熱を帯びるのは何故だろう。
 ふわふわと空気中を自由気ままに漂っているような心地良さ。

 離れたくない、離れ難い、ずっとこうしていたい。



 四つ這いの体勢がしんどくなってようやく、俺は身を引いて再び胡坐をかいた格好に戻った。
 ぼんやり見詰めれば、優しい眼差しが返って来る。


 紗恵は、ほんのり赤みがさした頬を濡らしたまま、嬉しそうに微笑んで口を開いた。

「いいんです。
 『私だけの瀬那くん』じゃなくていい。
 鏑木先輩はずっと、『みんなの瀬那くん』でいてください」

「どうして?
 紗恵は……俺のこと好きじゃないの?」

「好きです。
 女の子に平等な鏑木先輩が、大好きです」

 そう言って紗恵は、清々しい笑顔を見せる。


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