みつめていたい【短編】
「あ……りがと」

「ごめん、ちょっと強引だった」

彼がぼそっと謝った。


こころなしか赤く染まって見える彼の顔が、いつもよりずっと近くにあって、私の心拍数が一気に跳ね上がった。

彼に、私の心臓の音が聞こえませんように。


「びっくりしただけだから。平気」

と言うと、彼はほっと安心したような表情になり、そのまま私の左肩に頭を乗せた。


私は何が起こったのか把握できず、全身カチカチに固まってしまった。


深呼吸してゆっくり十秒数えたあと、そろそろと首を回して左側を向くと、私の肩にもたれた彼が、静かな寝息をたてて眠っていた。
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