みつめていたい【短編】
いつの間にか帰り支度を済ませたスズが、私たちの話に入ってきた。

「もー二人とも遅い!おいしいもの食べたら元気になるって。失恋も赤点も怖くないっつうの!」


スズの心の叫びを聞いたような気がして、ちょっと笑えた。

私とあっちゃんは急いで帰り支度を整えると、三人一緒に校舎を出た。



どこのお店に行くか、話しながら校門を通り過ぎたところで、

「シカトしないでよ」

と、男の人の声に話しかけられた。


え?


聞いたことのある声だった。

それもよく知っている…。


まさか……と思いつつ足を止め、そろそろと振り返ると、彼が門柱にもたれかかって立っていた。
< 27 / 38 >

この作品をシェア

pagetop