スパイシーな彼~あなたとの甘く優しい瞬間
約束
窓の隙間から光りがさしていた。


隣に寝ていたはずの晴香がいない。


起き上がった憲吾は、風呂場を見に行く…


髪を頭の上に止めて、泡風呂の中で憲吾をみつけて微笑む晴香。


子供の頃と変わらない笑顔に、自分も癒されている。


「憲吾も入る?」


「うん~そうしようかな」


憲吾が湯船に入ると、晴香がつぶやくように話した


「ごめんね憲吾。わがままばかり言って。きちんと帰るから心配しないで。憲吾には仕事があるのわかってるし…もし、憲吾に時間の余裕があるときに、少し時間を作って会ってくれるだけでいいから…」


「わかったよ…」


やっぱり本心は言わないほうがいいと思った。


せっかく家に帰ろうとする晴香を、自分の気持ちで迷わすことはできなかったから…


「洗ってあげるからおいで…」


「うん~」


今の晴香にしてあげられることを、全て憲吾はやろうと思っていた。


晴香が家に戻っても、ほんの少しでも笑顔でいられるように。


「くすぐったい~」


そんな晴香が愛しくて、このまま帰したくないほど憲吾の心は晴香にある。


許されない恋に落ちたフタリ。


でも憲吾が自分の心を見せないかぎり、晴香の気持ちにもセーブがかかるはず。


そして…


憲吾の言いたくない嘘の約束…


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