心の奥まで覗いてよ【仮面de企画】
装飾もインテリアも、クールでスタイリッシュ。
黒い壁に黒い壁。
モノトーンで統一された内装には金や赤のさし色がよく似合う。
金で縁取られたシャンデリアに
血のように赤い、上質なワイン。
何気なく置かれた、グラスも、食器も、全て上質なもの。
そして大きな花瓶に飾られた、真紅のバラ。
すごい……。
小市民の私は、この雰囲気だけでクラクラしそうだ。
呆気に取られる私に、満足そうな微笑を浮かべる理子。
対照的な私たちを見て黒服男はクスクスと笑うと
「こちらでは本名を語ることは禁止させていただいております。
藤堂様はマノン・レスコー。
遠山様はヴィオレッタと呼ばせていただきますのでご了承くださいませ。」
と、耳打ちする。
「へぇ…じゃあ男性に名前を聞かれたら私は“マノン”って答えればいいのね?」
「さようでございます。
あくまでもこのパーティーの趣旨は“秘密の夜会”でございますから。」
ニッコリと妖艶に微笑む理子に、仮面の黒服男。
そんな二人を呆気に取られながら見つめていると
「じゃぁ…行きましょ、ヴィオレッタ。
世紀の悪女に高級娼婦だなんて、素敵じゃない。」
理子は私の手を取ると、ゆっくりとフロアーへ歩いていった。